天文単位(てんもんたんい、astronomical unit)は天文学で用いる長さの単位で、ほぼ地球と太陽との平均的な距離に対応し、約1.5億kmを表す。 主として太陽系での天体の運動を記述するのに用いられている。 国際天文学連合 (IAU) は天文単位を表す記号として au を推奨するが、AU や a.u. も広く使われている。 国際度量衡局では ua とするが使用例は少ない。
定義とその変遷 [編集]
天文単位は元来は太陽と地球との距離を基準にして決められた。 地球は月や他の惑星による重力の影響を無視すれば円に近い楕円を描いて太陽の周りを回っている。 この楕円軌道の長い軸の長さの半分を軌道長半径といい、この長さが天文単位とされた。 1976年以降、この定義は用いられていないが、差は1千万分の1程度のわずかなものなので、厳密を求めなければ天文単位とは太陽をめぐる地球の軌道の軌道長半径、もしくは太陽と地球の間の平均的な距離とみなしてよい。
現在の正確な天文単位の定義はこれよりも複雑なものとなっており、もはや地球の軌道とは関係していない。 その代わりに定義では、地球の代わりにおいたある仮想的な粒子の運動を基準とする。 この粒子は、太陽からの重力以外の力を受けず、重さは無視でき、その軌道は完全に円であるようなものとされる。 このような粒子を考えると、太陽に近ければより強い力を受けて速く公転し、遠ければより弱い力を受けてゆっくりと公転する。 そうした軌道のうち、公転周期が 1 ガウス年(Gaussian year)と呼ばれるある決まった期間で巡るようなものの円軌道の半径を 1 天文単位 (1 AU) とする[1]。 ここでガウス年とは、地球の公転周期である恒星年に非常に近い 2π / k 日に相当する時間である。 ただし π は円周率、k はガウス引力定数と呼ばれる観測によらず約束事として厳密に決まった定数で k = 0.017 202 098 95 である。 よって、ガウス年は 365.256 898 ... 日を意味する。 この定義によって地球の実際の軌道長半径は現在 1 天文単位よりわずかに大きなものとなっている。
テスト粒子に力を及ぼしているのは太陽のみであるので、粒子がどれだけ動くかは太陽質量 S と重力の大きさを決める万有引力定数 G から決まる。 このテスト粒子には厳密にケプラーの第3法則が適用でき、公転周期が定数であるので、天文単位の大きさ A は地球とは関係なく GS の 1/3 乗(3乗根)に比例する値 A3 = (86400 / k)2 GS (時間の単位が秒のとき)と表される。
天文単位の値 [編集]
天文単位は、天体の測定を通じて GS を決定することで求められる。 ジェット推進研究所の1997年の天体暦 (DE405) では、この 1 天文単位をメートルで表した値は次のように求められている[2]。
1 AU = 149 597 870 691(6) m = 1.495 978 706 91(6)×1011 m
ただし括弧内の数字は最後の桁を単位とする誤差を表す。
値の永年変化 [編集]
天文単位が太陽質量 S に依存するため、太陽の質量の変化とともに天文単位は変化する。 太陽は核融合により質量の一部をエネルギーに変えて、やがて電磁波として放射し、また大気を太陽風として放出するので、1年あたりおよそ10兆分の1の比率で質量を失っていると見積もられている[3]。 こうした減少はそのまま太陽からの重力の減少を意味し、すべての惑星の軌道半径と公転周期を増加させる。 一方、天文単位の仮想的なテスト粒子はガウス年という一定の公転周期が保障されると定義されているため、重力の減少とともに粒子は内側の軌道を取らねばならず、上述の式のように質量の減少の比率の 1/3 の比率で天文単位の大きさは減少する。 この天文単位の大きさの減少は100年で 0.4 m ほどに相当する。
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